まもるくらしのお金相談所
家賃・住宅・悪質商法…くらしのお金の困りごとを正しく整理
賃貸・家賃2026.06.12 公開

急な家賃値上げ通知、今すぐ応じる必要はありません|普通借家契約の借主を守る「賃料増減請求権」

この記事は約4分で読めます

「来月から家賃を2万円上げます」という通知が届いたら、慌てて新しい金額を払ってしまいそうになりますよね。 しかし、借地借家法には納得できない値上げに対して、これまでの家賃を払い続けながら住み続けられるという、 借主に有利な仕組みが用意されています。 意外と知られていないこのルールを整理します。 ※この記事は「普通借家契約」を対象としています。定期借家契約の場合は扱いが異なるので、後半で説明します。

値上げ通知が来ても、家賃はその場では変わらない

借地借家法32条には、家賃(借賃)が近隣の相場や税金の負担、経済情勢の変化と比べて 不相当になった場合、大家さんも借主も「将来に向かって家賃の増減を請求できる」と定められています。

ここで大切なのは、これが「請求できる」権利だということです。 大家さんが「来月から○万円にします」と一方的に通知してきたとしても、 その瞬間に新しい家賃が確定するわけではありません。 借主が同意しなければ、最終的には話し合いや調停・裁判を通じて 「正当な家賃はいくらか」が決まる、という仕組みになっています。

話し合いがまとまるまでは、今までの家賃で住み続けられる

借地借家法32条2項には、家賃の増額についてもめている間は、 増額を求められた借主は「自分が相当と認める額」(通常はこれまでの家賃)を支払えば、 家賃の支払いとして有効であると定められています。

つまり、「値上げ通知の翌月から新しい金額を払わないと契約違反だ」「家賃を受け取らない」 といった対応には、法的な根拠がありません。 これまでの家賃をきちんと支払っている限り、それを理由に契約を解除したり、 退去を求めたりすることは、通常は認められません。

注意

「今までの家賃で住み続けられる」のは、あくまで話し合いや裁判が終わるまでの「仮の」状態です。 最終的に値上げが正当と認められた場合、借主はその時点までの差額を、 法律で定められた利息を付けて支払う必要があります。 「値上げには一切応じなくていい」という意味ではないので、 通知が来たら早めに状況を確認・交渉することが大切です。

値上げが「正当」と認められやすいのはどんな場合か

  • 近隣の似た条件の物件と比べて、今の家賃が明らかに低い
  • 固定資産税・都市計画税など、物件にかかる税負担が大きく増えた
  • 建物の維持費・修繕費が大きく増加した
  • 長期間家賃が見直されておらず、周辺の家賃相場と大きくズレている

逆に、「最近物価が上がっているから」「他の部屋を高く貸しているから」といった理由だけでは、 値上げの根拠としては弱いと判断されることもあります。

値上げ通知が来たときの対応ステップ

  • 慌てて新しい金額を払わない、慌てて同意書に署名しない
  • これまでの家賃は、滞納にならないよう通常どおり払い続ける
  • 近隣の家賃相場や、固定資産税の変動などを調べて、値上げの根拠を確認する
  • 納得できない場合は、大家さん・管理会社に理由を尋ね、交渉する
  • 話し合いで解決しない場合は、簡易裁判所に「調停」を申し立てる (家賃のトラブルは、訴訟の前にまず調停を行うのが原則とされています)

重要:これは「普通借家契約」の話です

ここまで説明した「相当と認める額を払い続けられる」という保護は、普通借家契約を前提にしています。

一方、定期借家契約では、契約書の中であらかじめ 「賃料は●年ごとに●%見直す」「期間中は賃料を変更しない」といった 賃料改定に関する特約を結んでいる場合があります。 このような特約がある定期借家契約では、借地借家法32条の規定が適用されず、 契約書に書かれたルールがそのまま優先される場合があります。

自分の契約が普通借家か定期借家かわからない場合は、契約書のタイトルや 「更新の有無」に関する条文を確認してみてください。 定期借家契約の基本的な仕組みについては、「定期借家と普通借家の違いとは?」で詳しく解説しています。

まとめ|焦って新しい家賃を払う前に、立ち止まって確認

  • 普通借家契約なら、値上げ通知が来てもその場で新しい家賃を払う義務はない
  • 納得できるまでは、これまでの家賃を払い続けて住み続けることができる
  • ただし最終的に値上げが認められれば、差額+利息の支払いが必要になる
  • 定期借家契約の場合は、契約書の特約が優先されることがあるので要注意

困ったときの相談窓口

家賃の値上げに関するトラブルは、お住まいの自治体の住宅相談窓口や、 消費生活センター(全国共通「188」)、簡易裁判所の調停窓口、 弁護士会の法律相談などで相談できます。一人で判断せず、まず相談してみましょう。

この記事が役に立ったらシェアしてください

この記事を書いた人

みのり

元銀行員・FP3級。住宅ローンや高齢者向け金融商品の相談窓口での経験をもとに、 家賃・住宅・相続・保険など「お金のトラブル」をわかりやすく解説しています。

→ プロフィール詳細はこちら

関連記事