職場に突然かかってくる電話や、SNSのダイレクトメッセージから始まる「ワンルームマンション投資」の勧誘。 「将来の年金が不安ですよね」「税金が戻ってきますよ」といったトークで、 都心の小さなマンション(コンパクトマンション)を購入するローンを組まされるケースが目立ちます。 全3回のシリーズで、ワンルームマンション投資の仕組みと見落とされがちな「落とし穴」を中立的に整理します。 第1回では、狙われやすい人の特徴と、勧誘トークの裏にある仕組みを見ていきます。
なぜ「公務員」「看護師」「会社員」が狙われるのか
ワンルームマンション投資の勧誘は、誰にでも同じように来るわけではありません。 営業会社が特に声をかけやすいのは、公務員、看護師、大手企業の正社員など、 収入が安定していて金融機関の住宅ローン審査に通りやすい人です。
- 勤務先・年収が安定しているため、不動産投資用のローンを組みやすい
- 職場のリスト(名簿)が営業会社に渡り、勤務先に電話がかかってくることがある
- SNSで「資産形成」「FIRE」などのキーワードに反応した人にDMが届く
「あなただから紹介できる特別な物件です」という言葉は、 実際には「ローンを組める属性の人」だから声をかけているだけ、というケースが多いのです。
よくある営業トークと、その仕組み
勧誘の際によく使われるトークには、いくつかの共通パターンがあります。 それぞれの言葉の裏にある仕組みを知っておきましょう。
「年金の代わりになります」
ローンを完済した後は、家賃収入がそのまま自分の収入になる、という説明です。 理屈としては成り立ちますが、完済までの数十年間、家賃収入だけでローンを返し続けられるかという前提が崩れると、年金代わりにはなりません。この点は第2回で詳しく解説します。
「生命保険の代わりになります」
投資用ローンを組む際には、契約者が亡くなった場合にローンが完済される 「団体信用生命保険(団信)」に加入することが一般的です。 そのため「もし契約者に万一のことがあれば、ローンがなくなった物件が家族に残る」という説明がされます。 ただし、これは「保険」として比較したときに本当に条件が良いのかを、 通常の生命保険と比べて検討する必要があります。
「頭金0円・諸費用だけで始められます」
自己資金がほとんどなくても始められる、という説明です。 裏を返せば、物件価格のほぼ全額をローンで組むということであり、 手元の現金が減らない分、毎月の返済負担と借入総額は大きくなります。
「税金が戻ってくる」は本当か?|損益通算のしくみ
「節税になります」という説明の多くは、「損益通算」という仕組みを利用したものです。 簡単に言うと、次のような流れになります。
- 不動産投資を始めた初年度は、購入時の諸費用(仲介手数料・登記費用など)がまとまってかかる
- その結果、会計上は不動産の収支が「赤字」になりやすい
- その赤字を、本業の給与所得と相殺(損益通算)することで、すでに払った所得税・住民税の一部が戻ってくる
注意
「税金が戻ってくる」のは、あくまで初年度など、不動産の収支が赤字になっている年に限った話です。 赤字でなくなれば、この効果はなくなります。 また、戻ってくる税金の金額は、ローンの返済や管理費・修繕積立金の負担と比べると、 多くの場合ごく一部にすぎません。 「節税額」だけを見て、トータルでの収支がどうなるかを確認しないまま契約するのは危険です。
「サブリース(家賃保証)」という言葉の安心感
「空室になっても、当社が一定額の家賃を保証します」というサブリース(家賃保証)契約も、よく説明される仕組みのひとつです。 「空室リスクがないので安心」という説明を受けると、不安が和らぐ人も多いでしょう。
しかし、この「保証」には見直しのタイミングや条件があり、 契約書をよく読まないと、当初の説明どおりに保証され続けるとは限りません。 この点は次回、詳しく解説します。
まとめ|営業トークと仕組みを分けて理解する
- ワンルームマンション投資の勧誘は、ローン審査に通りやすい人(公務員・看護師・会社員など)に集中しやすい
- 「年金代わり」「生命保険代わり」という説明は、仕組み自体は成り立つが前提条件がある
- 「税金が戻る」のは損益通算によるもので、効果は初期の一時的なものにすぎないことが多い
- 「家賃保証(サブリース)」は安心な響きだが、見直し条件の確認が必須
次回は、こうした仕組みが「マイナス収支」につながっていく具体的な理由を見ていきます。
この記事はシリーズ全3回の第1回です
- 第1回 仕組みと営業トークの裏側(この記事)
- 第2回 「マイナス収支」になる理由
- 第3回 「出口」の現実と契約前チェックリスト