「自宅に住み続けたまま、まとまったお金が手に入ります」—— テレビCMやチラシでよく見かけるリースバック。 老後資金や住宅ローンの返済に困ったときの解決策として勧められますが、 仕組みをよく理解しないまま契約して「こんなはずではなかった」と後悔する人も少なくありません。 この記事では、リースバックの仕組みと、見落とされがちな「落とし穴」を中立的に整理します。 リースバック自体が悪い制度というわけではなく、合う人・合わない人がはっきり分かれる仕組みだということを知っておきましょう。
リースバックとは?まず仕組みを理解する
リースバックとは、自宅を不動産会社などに売却し、その後は家賃を払ってそのまま住み続ける仕組みです。 「売る」と「借りる」を同時に行うイメージです。
- 自宅を売るので、まとまった現金が一度に手に入る
- 引っ越しをせずに、これまでどおり同じ家に住み続けられる
- 所有者ではなくなるので、固定資産税やマンションの修繕積立金などの負担がなくなる
ここだけ聞くと良いことばかりに見えますが、「売却」と「賃貸」それぞれに注意点があり、 その両方が重なるのがリースバックの難しいところです。
落とし穴①|売却価格が相場より安くなりやすい
リースバックの売却価格は、通常の市場で売る場合よりも安くなるのが一般的です。 買い取る会社は「その後あなたに貸し続ける」という前提で買うため、 市場価格の6〜8割程度になることも珍しくありません。 「すぐに現金化できる」手軽さの裏で、本来得られたはずの売却益を取り逃がしている可能性があります。
落とし穴②|家賃が割高になりやすい
住み続けるために払う家賃は、買い取った会社が投資額を回収できるように設定されるため、近隣の同じような物件の家賃より高くなることがよくあります。 受け取った売却代金を家賃として少しずつ払い続けると、 数年〜十数年で「売って得たお金を、家賃でほぼ払い終えてしまう」というケースもあります。
注意
「売却価格が安め」かつ「家賃が割高」の両方が重なると、 トータルで見たときに大きく損をしてしまうことがあります。 目の前のまとまった現金だけで判断せず、 「何年住むと、受け取った金額を家賃で払い終えてしまうのか」を必ず計算してみてください。
落とし穴③|「ずっと住み続けられる」とは限らない
リースバックの賃貸契約が定期借家契約になっている場合、 契約期間(2〜3年など)が満了すると、更新されずに退去を求められる可能性があります。 「一生住める」と思っていたのに、数年後に「契約は終了です」と言われて住む場所を失う—— これがもっとも深刻なトラブルです。
さらに、買い取った会社の経営が悪化したり、物件が第三者に転売されたりすると、 新しい所有者との関係で住み続けられなくなるリスクもゼロではありません。 普通借家と定期借家の違いについては、「定期借家と普通借家の違いとは?」で詳しく解説しています。
落とし穴④|「買い戻し」ができるとは限らない
「将来お金ができたら買い戻せます」と説明されることがありますが、 買い戻しの価格は売ったときより高く設定されるのが普通です。 また「いつまでに」「いくらで」買い戻せるのかが契約書に明記されていないと、 実際には買い戻せないこともあります。口約束をあてにするのは危険です。
リバースモーゲージとの違い
自宅を活用してお金を得る仕組みには、リースバックのほかに「リバースモーゲージ」があります。 大まかには次のような違いがあります。
- リースバック自宅を「売る」。所有権は手放すが、現金を一括で受け取り、家賃を払って住み続ける
- リバースモーゲージ自宅を「担保に借りる」。所有権は残るが、借金であり、契約者が亡くなったときなどに自宅を売って返済する
どちらも一長一短があり、家族構成や今後の住まいの希望によって向き不向きが変わります。 リバースモーゲージの注意点は、「リバースモーゲージとは?」で詳しく解説しています。
契約前に必ず確認したいチェックリスト
- 売却価格は、通常の不動産売却の相場と比べていくら安いか
- 毎月の家賃はいくらで、近隣の似た条件の物件の家賃と比べて高くないか
- 賃貸契約は「普通借家」か「定期借家」か。定期借家なら期間と再契約の条件
- 受け取る金額を、家賃で何年払うと使い切ってしまう計算になるか
- 買い戻しができる場合、その価格・期限・条件が契約書に明記されているか
- 複数の会社から見積もり(査定)を取り、条件を比較したか
まとめ|「住み続けられる安心」と「お金の損得」を切り分けて考える
- リースバックは「自宅を売って、家賃を払って住み続ける」仕組み
- 売却価格は相場より安く、家賃は割高になりやすい
- 定期借家契約だと、数年後に退去を求められる可能性がある
- 「買い戻せる」「ずっと住める」は契約書で必ず確認する
- 急いで契約せず、必ず複数社を比較し、家族にも相談する
困ったときの相談窓口
リースバックの勧誘や契約で不安を感じたら、契約前に一度立ち止まりましょう。 契約内容のトラブルは、お住まいの自治体の住宅相談窓口や、 消費生活センター(全国共通「188」)に相談できます。 売買契約書・賃貸借契約書を手元に用意して相談するとスムーズです。